ここだけの話。
「次、乾杯する時は日本ですね!」
カナダ最終日の事。
トロント・ピアソン国際空港に併設されているバーで、ジョッキビール片手にA君が言った。
整った顔立ちに少し長い茶髪。
そして軽めに当てたパーマ。
簡単に説明すると、お酒大好きなジャニーズ系。
「ええなぁー。2人とも出身同じやから日本でも簡単に会えるやん!」
と、長い付けまつ毛に茶髪でセミロング。
ゴテゴテの関西弁、僕より1つ年上で姉御肌のAちゃん。
簡単に説明すると、アル中。
そんな2人が、わざわざ僕の為に空港まで見送りに来てくれた。
前もって「見送りしなくても良いよ!」
と言ったものの、
「その日、バイト休みもらったので!」
とお酒大好きなジャニーズ系。
「うちも休みやからA君と空港まで行くで!」
とアル中。
トロント生活の大半は、この2人と過ごした様な気がする。
(フィリピン留学、ワーホリ、英語環境とは何だったのか?)
【アル中会】と言う名の週に1回の飲み会。
酷い時は週に4回。
働いて稼いだお金が、全てアルコールに消える事もしばしば。
「日本でもアル中会しよなー!」
トロントのピアソン国際空港。
カナダでは最後となるアル中会で、Aちゃんが言った。
そして、僕にプレゼントをくれた。
更に手紙まで貰った。
「手紙は飛行機の中で読んでくださいね!」
と、お酒大好きなジャニーズ系。
「ありがとう。じゃあ、そろそろ行くね…」
込み上げてくるヤバイ気持ちを押さえ、僕達3人は最終ゲートへと向かった。
最終ゲート。
ベルトパーテーションでジグザグに仕切られている通路の手前。
「ウチらはここまでやなぁ…」
と、アル中。
「最後にみんなで写真撮りましょ!」
と、お酒大好きなジャニーズ系。
そこで、僕達は写真を撮った。
「また日本で!」
2人と固く握手して、僕はジグザグに仕切られている通路を搭乗口向けて歩いた。
別れはいつだってどんな時でも辛くて、それが仲良くなれば仲良くなるほど余計に辛い。
搭乗口向けてジグザグ歩いている間、トロントでの色んな出来事が走馬灯の様に頭に浮かんでしまった。
皆でキャッチボールをした事、BBQをした事、服を着たままオンタリオ湖に飛び込んだ事、ナイアガラのカジノで全員がボロ負けした事、一夏の恋をした事、、
そして気が付いたら、僕の目から湿った物が出てきてしまった。
(だから、見送りしなくても良いって言ったのに…)
2人はまだ僕に向けて両手を振っていて、この距離なら湿った物の正体がバレないだろうと思う位置で振り返り、僕も2人に両手を振った。
「ありがとう、またね!」
遠かったし、声も上手く出せなかったから、2人に聞こえたかは分からない。
それから、僕は飛行機へ乗った。
3列シートの窓際席。
外は雨。
「手紙は飛行機の中で読んでくださいね!」
約束通り、僕は2人から貰った手紙を読んだ、、
少しづつ離陸して行く飛行機の中。
機内に大粒の雨が降っていた事。
それが涙だと気付き、隣席の人にバレない様にと窓の外に目をやった事。
それは、ここだけの話。
話変わって、西日本のとあるゲストハウスにて宿直スタッフとして働き始めました。
宿直スタッフとは、オーナーのお手伝い(チェックイン、チェックアウト業務、ゲストの送り迎え、ベッドメイキング、清掃)
などをする代わりに、無料でそのゲストハウスに宿泊できると言った物です。
なので、給料は発生しません。
少額ながら給料が発生するゲストハウスもありますが、僕が宿直スタッフとして働いているゲストハウスは給料無しです。
まあ、自分の好きな場所でやりたい事をやらせてもらっているので楽しいです。
ちょっと前まではアレでしたけど、、
僕の宿直スタッフとしての主な仕事は、
8時、無料の朝食準備
↓
8時〜10時、ゲストと交流、チェックアウト業務、見送り
↓
10時〜12時、清掃、ベッドメイキング
↓
12時〜16時、全力でニート
↓
16時〜 チェックイン業務
↓
22時30分、消灯
と言った感じです。
お客さんの9割が外国人観光客で、オーストラリア、カナダでワーホリをしていた時よりも英語を使います。
ただ、僕の英語力は出川イングリッシュ。
「ソーリー、ソーリーね!」
「ディスイズ、ベリベリホット!」
「トゥデイ、メニメニピーポーカミングー!」
みたいな。
ネイティブ相手には本当に申し訳ない。
しかし、そんな適当な英語を理解し聞いてくれる。
更には
「ここに泊まって良かった。」
「次も日本に来たら、ここに泊まるよ!」
「もっと、ここに泊まっていたいわ!」
「母国の友達に、ここのゲストハウスを紹介するね。」
「親切にしてくれてありがとう!」
「毎回、朝食作ってくれてありがとう。」
など、凄い嬉しい言葉をかけて頂きます。
もしこれが、自分で作り上げたゲストハウスだったら、どれほどに嬉しい事なんだろう。
ほんの少しだけですが、ゲストハウスで働いて分かった事があります。
それは、毎日出会いと別れが訪れると言う事。
別れはいつだってどんな時でも辛くて、それが仲良くなれば仲良くなるほど余計に辛い。
見送られる側より、見送る側の方が辛い事は何度も経験してきた事だから知ってる。
だから、毎回ゲストの荷物を持って玄関まで見送りに行く時はちょっと辛くて、、
「Have a nice day!!」
なんて言ったりして、ゲストが見えなくなるまで手を振ったりもする。
それから、ゲストが出て行った後の空っぽになった部屋の掃除。
大した事をした訳じゃない。
ただ単にゲストの荷物を運んだり、お勧めの観光スポットを教えたり、たどたどしい英語で会話のキャッチボールをしたり、、
僕にとっては、普通の事をしただけ。
カナダ最終日とは真逆で、やや暖かく春が見え隠れしていたこの日。
嬉しいのか、寂しいのか、どっちか分からない気持ちに襲われてしまった事。
そして、少しだけ湿った物が目から出てきてしまった事。
それも、ここだけの話。
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